
材料
- 米
- 水(鍋で炊く場合は米の量の1.2~1.5倍)
- 酢
- 砂糖
- 塩
作り方
- 酢、砂糖、塩を適量混ぜ、寿司酢を作る。酢の瓶のラベルに必ず寿司酢の作り方が載っているので、それを参考に!既に調味済みの寿司酢を使っても。炊き上げたご飯をなるべく大きな入れ物に移し、真ん中にうず高く盛って、熱いうちに酢をてっぺんからかけ、しゃもじで切り混ぜる。
まさに昔取った杵柄である。
二ヶ月だけバンクーバーの寿司屋で働いたことがある。何故二ヶ月だけかというと、つまり、首になったのである。『就職しても長続きしない癖』は、思えばこの頃から始まっていたのだろう。
しかし、ここで覚えた事は伊達じゃなかった。
北米ではごくごく、メジャーなカリフォルニア・ロールは、日本の寿司屋ではまず見かけない。日本人でもその存在を知らない人は多い。しかし、アメリカ人が考案したにしては意外に美味い。珍しい上に美味いから、日本人の知り合いに作ってあげても喜ばれる。もちろん、ガイジンに作ってあげても大喜びされる。日本でも欧米でも材料が比較的手に入りやすいのも有り難い。
大体、日本に普通に住んでいて、さあ!巻き寿司を作ろう!などと、一人暮らしの若者が思ったりする事などまずないのではないか。準備するのもメンドクサイので、わざわざ作ってまで食べたいとは思わないだろう。ところが、仕事としてとにかく鬼のようにカリフォルニア・ロールその他の巻き寿司を黙々と生産し続けた筆者は、一般家庭用にごく少量準備する事など屁とも思わなくなってしまった。鬼のように刻みものをして包丁に慣れたのと同じ経過なワケだ。随分特異な特技を手に入れたものである。
裏巻きは難しそうに見えるが、実は細巻きより楽にできる。巻き簾が汚れるのと寿司飯がくっつくのを防ぐため、巻き簾の上にサランラップを敷くのがポイント。具が多すぎると上手く巻けないので加減して。きゅうりの代わりにかいわれ大根やアルファルファを使っても良いかも。太巻きの場合は、何故か側面に白胡麻を振るレストランが多い。良ければお試しを。トビコなど、小さい魚の卵系を全面にまぶしたカラフルなものもある。
自分の好物を寿司の具にしてみただけ…。グレープフルーツを寿司の具にするのは意外らしく、知らずに食べた人がその感触から「魚の卵」だと勘違いした事があった。カナダ人にとっても意外な取り合わせらしいが、結構誰にでも好評。何処でも材料が手に入るのも有り難い。
単に残り物を利用しただけなのだが、作ってみたら意外に美味かった!巻くのが面倒な人はチラシ風に具を切って、こちらで済ますのが良いかも。
オクラのねばねばが意外とイケるよ!
ワーキングホリデー時代、2ヶ月だけ寿司屋で巻物職人をしていた。実はそれまでチラシ寿司でさえ作った事もなかったのだが、初日にいきなり「こうやってこうやるのだよ」とちゃちゃっと教えられ、ハイじゃあよろしく、と、いきなりカウンター前の調理台に立たされたのである。こんな俄か仕込みのバイトを使うなんて、ここの寿司屋は三流に違いない、と思った。一応板前は日本人だったが、事実、使っている材料は冷凍物が多く、少なくとも日本の超一流寿司屋に肩を並べられるものではないと思っていた。
ところが。
5年後、二度目にカナダを訪問中、カナダ人の知り合いに二度ほど寿司をご馳走になった事がある。他の寿司屋で食べるのは初めてのことだった。一回目に連れて行かれたのはショッピングモールの中の回転寿司。「寿司をご馳走しよう」と、如何にも羽振りの良い事を言われたので、内心結構期待していたのに、コレである。しかし、日本の回転寿司はこの頃侮れない。相手のカナダ人もここの寿司は結構美味いと太鼓判を押す。一縷の望みは捨てなかった。が、閉店間際だったため、主だったネタは殆んど切れており、回っているのは干からびて不味そうな物ばかり。「注文しても良いよ」と相手が言うので、そうしてみたものの、ネタ切れのためロクな物は残っていないし、サービスも粗悪で、頼んだ物がなかなかやってこない。やっと出てきたと思った「てんぷら巻き」は、中身が何なのかよくわからない代物で、脂っこくて、とにかく不味い。「カナダの寿司は日本のと違うって聞いたことがあるけど、これなんかもそう?でも結構美味いよね」などと本気の顔で言ってくるからますますげんなりしてきた。
二回目はランチタイム食べ放題の寿司屋で、店の名はれっきとした日本語表記、しかし、従業員は全員中国人であった。今度はネタ切れなどという事もなく、頼んだ物が全て出てきたものの、その一つ一つの小さい事!てんぷらは相変わらずべとっとしているし、鮭皮の香ばしさが売り物のBCロールも焼き加減が甘い。しかし、相手のカナダ人は「う~ん、うまいね!」と、かなりご満悦のよう。相手の奢りなので下手な事は言えなかった…。
そんなこんなで、それまで三流だと思っていたバイト先の寿司屋が、まあ、相変わらず三流には違いないのだが、バンクーバーではマシな部類に入る事実に気が付いたのだった。
また、バンクーバーにフリーツアーで遊びに来た友人が、ツアーのフリーオプションである「寿司ディナー」を食べてきて一言、「みごと最悪、disgusting」だったそうだ。筆者は実際には食べていないので、何処がどう不味かったのかわからないが、フリーの企画なんてそんなものである。大体、カナダに来てまで何故日本食を食べさせようとするのか、旅行社の考える事はよくわからん。カナダの方がネタが新鮮で美味しい、ならともかく。しかし、そんな風に勘違いしている人は多いらしい。
そう言えば、寿司屋でバイトしていた時分、ワーキングホリデーか留学でこちらに住んでいそうな日本人の男の子と、彼を訪ねて日本からやって来たと思われる友人らしき人が2-3人、カウンターの前に陣取っていた事がある。「美味しい~!」とばくばく寿司をがっつく友人たちに向かって、長期滞在者らしきその男の子は、実に得意げにこう言った。「そりゃそうさ、だって、ネタが違うんだもん!」…お~い、どのネタの話ですか~???ウチのネタは殆んどが冷凍なんですけど~?、と、勿論そんなことは言いはしなかったものの、彼の知ったかぶり振りは爆笑物だった。
バンクーバーは日本人在住者が多いせいか、寿司屋の数もザラじゃない。中には上のような他のアジア人経営の怪しい店もあるから、ひょっとしたら、日本国内の同じような市街地よりも密度は高いかもしれない。しかし、その半分はファストフード感覚なものだ。また、怪しい巻き寿司の数々が余程ポピュラーなこの地では、高い技術が必要な「握り」の腕はそれほど必要とされないのかもしれない。何しろ「型抜き寿司セット」で作った寿司でも満足してしまうようなレベルの客層なのだから…。
寿司屋で働いていたせいもあるけれど、筆者のような中途半端な長期滞在者はカナダにいてまで、わざわざ寿司なんか食べに行かないものだ。ひょっとしたら、筆者が知らないだけで、何処かに超一流の寿司屋が存在するのかもしれない。カナダを離れる前に、そんなものを探してみるのも面白いだろうし、また、日本ではお目にかかれない北米産メニューを食べ納めておきたいとも思っている。